
コロナ禍に生まれた奇跡:ピーター・ティールから250億円を調達したドバイ発フィンテック「Baraka」の物語
こんにちは!YHIKのイケダです。
今日はドバイから、すごい話をお届けします。
2020年、コロナ真っ只中。
世界中が大混乱してる時に、ドバイで新しい会社を立ち上げた男がいます。
そして2年後…
ピーター・ティールから2,000万ドル(約250億円)の投資を受けました。
ピーター・ティールって、PayPal創業者でFacebookの最初の投資家。
その人が「中東で初めて投資する」と決めた会社です。
主人公の名前は、フェラス・ジャルブート。
彼が作った会社「Baraka」の物語です。
銀行マンとして15年働いた男の違和感
フェラス・ジャルブートは、まじめな銀行マンでした。
カナダのカールトン大学で政治学と国際関係を学んで、2007年に就職。その後、カーネギーメロン大学のテッパー・スクール・オブ・ビジネスでコーポレート・イノベーションと起業について学びました。
最初はカタールの銀行から始まって:
- スタンダードチャータード銀行 プライベートバンキング部門
- バークレイズ・ウェルス マネジメント
- ドバイのオーロラ・パートナーズ
15年間、ずっと金融業界で働いてました。
お客さんは「超金持ち」ばっかり。
最低でも資産10億円以上の超富裕層(UHNW:Ultra High Net Worth)です。
フェラスの仕事は、そんな富裕層の資産運用をお手伝いすること。
でも、毎日働いてて、すごく違和感がありました。
「なんで金持ちだけが、いい投資商品にアクセスできるんだろう?」
「普通の若者は、なんで投資できないんだろう?」
中東の若者が置き去りにされてる現実
フェラスが気づいたのは、中東の深刻な問題でした。
人口の70%が30歳以下なのに、投資する手段がない。
銀行で投資しようとすると:
- 手数料:1回500円〜1,000円
- 最低投資額:10万円〜
- アプリ:使いにくい
- 情報:英語ばっかり
特にUAEは人口の90%が外国人。
年金制度がないから、自分で資産形成するしかありません。
でも、そのための道具がない。
「これって、めちゃくちゃおかしくない?」
フェラスは毎日そう思ってました。
フェラス自身がカナダで育った経験が、この違和感を強くしました。カナダでは株式投資や政府支援の退職金制度が制度化されており、投資は当たり前でした。しかし中東では、人々は何年もの間、銀行預金と不動産という従来の貯蓄手段に依存していました。
コロナ禍に「今しかない」と決断
2020年3月。
コロナで世界中がロックダウン。
みんな家にこもって、先行きが見えない状況。
普通なら「今は起業する時じゃない」って思いますよね。
でも、フェラスは逆に考えました。
「今だからこそ、チャンスなんじゃないか?」
理由は3つありました。
1. みんなスマホを見る時間が増えた
ロックダウンで外出できない。
みんな暇だから、スマホでできることを探してる。
「今なら、新しいアプリにも注目してもらえる」
2. お金への関心が高まった
コロナで経済が不安定になって、みんなお金の心配をし始めた。
「投資を始めたい人が増えてる」
3. 競合他社も動けない
大企業は会議ばっかりで、新しいことを始められない。
「今なら先手を打てる」
こう判断して、15年間の安定した銀行員生活を捨てました。
2020年7月、会社設立。
共同創業者は技術のプロ
フェラスは金融のプロですが、アプリは作れません。
そこで、クナール・タネジャという男性と組みました。
クナールは20年間、中東でフィンテック関係の仕事をしてきた技術者。

マイクロソフト、AWS、Y Combinatorの資格も持ってる、ガチのエンジニアです。
二人で話し合って、こんなアプリを作ることになったんです。
「1ドルから投資できる、超簡単なアプリ」
最初のアプローチ:教育から始める
「Baraka」という名前で開発を始めました。
でも最初はアプリじゃなくて、教育プラットフォームでした。
アプリをローンチする前に、ニュースレターとポッドキャストを使って、中東の個人投資家、特にUAEの人々に株式投資と金融知識について教育していました。
なぜかというと、中東の若者の多くは投資経験がありません。
「投資って怖い」
「お金持ちがやるもの」
「ギャンブルでしょ?」
そんなイメージを持ってます。
だから、いきなりアプリを作るより、まず信頼関係を築くことから始めました。
Akhbarakaニュースレター
週1回、投資に関する情報を配信。
「今週のアメリカ株式市場は?」
「なぜApple株が上がったのか?」
「初心者におすすめのETFは?」
難しい金融用語を使わず、アラビア語と英語で簡単に説明。
ポッドキャスト
アラビア語と英語で、投資の基礎を解説。
ゲストに成功した投資家を呼んで、体験談を聞く。
この戦略が大当たりしました。
現在では4万人以上のアクティブな読者が毎日無料で金融コンテンツを受け取っています。
ローンチ前に1万人が予約
2021年6月、アプリをリリースする前に「事前登録」を始めました。
「もうすぐリリースします、登録してください」
そんな感じで、ウェイティングリストを作ったんです。
結果は…
1万人が登録。
まだアプリもできてないのに、です。
「これは絶対にニーズがある」
フェラスは確信しました。
同時に、重要な認可も取得:
- ドバイ金融サービス庁(DFSA)の認可
- アメリカのDriveWealthという会社と提携して、技術基盤を整備
Y Combinatorに選ばれた奇跡
2021年夏、大きなニュースが飛び込んできました。
Y Combinatorに選ばれたんです。
Y Combinatorって、Airbnb、Dropbox、Stripeを輩出した世界最高のアクセラレーター。
UAEの会社としては4社目。
3ヶ月間、シリコンバレーで集中的にメンタリングを受けました。
「ビジネスモデルはどうする?」
「マーケティング戦略は?」
「技術的な課題は?」
世界トップレベルの起業家たちから、直接アドバイスをもらえる環境。
フェラスにとって、人生最高の経験でした。
この時のアドバイスが、後のピーター・ティールからの投資につながる重要な転機となりました。
最初の資金調達:4億円
Y Combinatorでの経験を活かして、2021年8月に最初の資金調達をしました。
調達額:500万ドル(約5億円)
投資家は:
みんな有名な投資会社です。
この資金で、チームを拡大。
エンジニア、マーケティング、カスタマーサポート…
本格的な会社になりました。
アプリローンチと初期成長
2021年7月、ついに正式にアプリをローンチ。
特徴は:
- 最低投資額:1ドルから
- 手数料:完全ゼロ
- 対象商品:6,000以上のアメリカ株・ETF
- 言語対応:英語とアラビア語
- イスラム金融対応:シャリア準拠フィルターあり
CNNからは「中東のRobinhood」と称されました。
でも、Robinhoodとは決定的な違いがありました。
リスクの高い取引(デリバティブ、マージン取引など)は意図的に提供しない
なぜかというと、Robinhoodは経験の浅いユーザーを高リスク取引に誘導して批判を受けていたからです。実際、20歳の学生が取引で73万ドルの損失を出したと勘違いして自殺する事件も起きていました。
フェラスは決めました:
「僕たちは、お客さんを守る。短期的な利益より、長期的な信頼を選ぶ」

ユーザー急拡大の秘密:徹底的な教育
Barakaが成功した最大の理由は、徹底的な「教育」でした。
アプリ内教育システム
投資する前に、必ずリスクについて説明:
「投資は元本割れの可能性があります」
「分散投資が大切です」
「長期投資を心がけましょう」
しっかり理解してもらってから、投資してもらう。
プレミアム分析サービス
月額10ドル(約1,500円)で、Refinitivの詳細な企業分析レポートにアクセス可能。
これが主な収益源になりました。
ローカライゼーションの徹底
フェラスが特に重視したのは、ローカル市場への適応:
- アラビア語対応:完全ローカライゼーション
- 現地通貨:UAEディルハムでの表示
- イスラム投資商品:シャリア準拠フィルターと配当浄化機能
- 現地コンテンツ:地域の金融ニュースと国際市場の両方をカバー
「これらは現地市場にとって重要な要素です。我々は時間をかけて、人々のニーズに対応するローカライズされたソリューションを開発し続けます」とフェラスは語っています。
ピーター・ティールとの運命的な出会い
2022年秋、フェラスの元に信じられない連絡が来ました。
ピーター・ティールの投資会社「Valar Ventures」から、投資の打診。
ピーター・ティールは:
- PayPal共同創業者
- Facebook最初の投資家
- Palantir創業者
シリコンバレーの伝説的起業家です。
そのピーター・ティールが、「中東で初めて投資したい」と言ってきたんです。
なぜBarakaを選んだのか?
Valar Venturesのゼネラルパートナー、アンドリュー・マコーマックは説明しました:
「中東は人口の70%が30歳以下。でも投資の選択肢がない」
「Barakaは、その巨大な市場を開拓している」
「創業者の金融業界での経験と、技術者の実績が素晴らしい」
「我々にとって、中東の新興フィンテックエコシステムへの初投資となります。Barakaが示した初期の牽引力の兆候に勇気づけられています」
2,000万ドル調達の歴史的瞬間
2022年11月15日、歴史的な発表がありました。
Valar Ventures主導で、2,000万ドル(約250億円)を調達。
参加投資家:
- Knollwood Investment Advisory(グローバル投資会社)
中東のフィンテック企業としては、かなり大きな金額です。
しかも、ピーター・ティールの投資会社が主導というのが、すごいインパクト。
「シリコンバレーが、中東を認めた」
そんな象徴的な出来事でした。
フェラスのコメント:
「僕たちは、中東の若者に投資の機会を提供したかっただけ。それが世界的に注目されるなんて、夢みたいです」
現在のBaraka:驚異的な成長データ
2024年現在、Barakaは順調に成長してます。
展開エリア
7カ国:UAE、サウジアラビア、バーレーン、オマーン、クウェート、カタール、エジプト
ユーザー統計
- ユーザー数:数万人(2022年時点で「tens of thousands」)
- 年齢分布:56%が30歳以下
- 投資経験:50%以上が初回投資家
- アクティブユーザー:83%が生涯で3回以上取引
商品ラインナップ
- 投資対象:6,000以上のアメリカ株・ETF
- 最低投資額:1ドル
- 手数料:ゼロ
- ニュースレター読者:4万人以上
特に印象的なのは、ユーザーの50%以上が「初回投資」ということ。
今まで投資をしたことがない人たちが、Barakaで初めて投資を始めてるんです。
成功の5つの深い秘訣
フェラスの成功を分析すると、5つのポイントがあります。
1. 現場を知り尽くしていた
15年間、金融業界で働いた経験。
富裕層のプライベートバンキングを見てきたからこそ、「普通の人が置き去りにされてる」問題に気づけました。
2. 最悪のタイミングで始めた勇気
コロナ真っ只中の起業は、普通なら「無謀」です。
でも、だからこそチャンスがありました。
みんなが動けない時に動く勇気。
3. 教育を最優先にした
単に「投資アプリ」を作るだけじゃなく、「投資教育」にも力を入れた。
お客さんが成功すれば、長く使ってもらえる。
短期的な利益より、長期的な関係を大切にしました。
4. ローカライゼーションの徹底
アラビア語対応、現地通貨、イスラム金融商品…
グローバル商品をローカルニーズに合わせて調整。
5. リスク管理を最優先
Robinhoodのような高リスク取引は意図的に排除。
顧客保護を最優先にした結果、信頼を獲得。
ドバイ起業エコシステムの力
フェラスの成功は、ドバイ起業エコシステムの可能性を示してます。
規制環境の整備
ドバイ国際金融センター(DIFC)は、金融スタートアップに優しい規制環境。
認可は大変だけど、取得すれば世界的な信頼を得られます。
BarakaはDIFC Fintech Hiveの支援も受けています。
地理的優位性
ドバイから、GCC諸国(湾岸協力会議)全体にアクセス可能。
人口約5,000万人の市場が狙えます。
多様な人材プール
世界中から優秀な人材が集まってる。
フェラスも、様々な国籍のメンバーでチームを作りました。
政府のスタートアップ支援
UAE政府は、フィンテック育成に積極的:
- Hub71:アブダビのテックエコシステム(Barakaも参加)
- DIFC Innovation Hub:ドバイの金融イノベーション拠点
- ADGM Reg Lab:アブダビの規制サンドボックス
現在の挑戦と将来戦略
現在取り組んでいる新機能
- 配当再投資プラン
- 時間外取引
- AI投資アシスタント(最近ローンチ)
次の大きな目標:現地株式取引
Barakaは調達資金の大部分を使って、現地証券取引所との提携に取り組んでいます:
- Tadawul(サウジアラビア証券取引所)
- DFM(ドバイ・ファイナンシャル・マーケット)
- ADX(アブダビ証券取引所)
なぜこれが重要かというと、Tadawulだけで2022年上半期に47億ドルを調達し、地域全体のIPOが前年比約300%増加しているからです。
「我々の野心は、タダウル、DFM、ADXと提携することで現地株式も提供することです」とフェラスは語っています。
地域拡大計画
- アフリカ市場への進出
- 南アジアでの事業展開
- 暗号通貨取引の追加
2024年のフィンテック予測
フェラスが予測する2024年のトレンド:
1. AI統合の深化
「最大のインパクトは、パーソナライズされた投資ジャーニーのためのAIの強化された統合です。このAIの深い統合は、パーソナライズされた金融サービスに革命をもたらし、我々の厳選された金融教育へのコミットメントとシームレスに連携することを目指しています」
2. エンベデッド・ファイナンス
「2024年に予想される注目すべきトレンドは、従来の金融とテクノロジーの継続的な融合で、これによりエンベデッド・ファイナンスが台頭します。このトレンドは、企業が金融サービスを自社製品に直接統合し、金融取引を簡素化・合理化することを含みます」
3. オープンバンキング
特にUAEでは、政府支援のオープンバンキング・イニシアチブ「Aani」(インドのUPIに似たシステム)のローンチが控えており、新たな機会を生み出すでしょう。
起業家への深いメッセージ
最後に、フェラスの経験から学べる教訓を紹介します。
1. 問題の本質を理解すること
「一番大切なのは、お客さんの問題を本当に理解すること。技術も大切だけど、それより大切なのは、誰のどんな問題を解決するかを明確にすること」
フェラスは15年間、現場で働いて問題を理解しました。
だから、的確な解決策を作れたんです。
2. ネットワーキングの重要性
「ネットワーキングは、情報を得て、戦略的パートナーシップを築き、協力して課題をナビゲートするために重要です。強固なネットワークを構築することで、貴重な洞察、潜在的なコラボレーション、業界のサポートへの扉が開かれます」
3. 規制を軽視しない
「フィンテックでは忍耐が重要です。急ぐことは見落としにつながり、規制コンプライアンスで手抜きをすることは長期的な成功を危険にさらす可能性があります。規制の細心な遵守を優先して、ステークホルダーとの信頼を構築し、法的コンプライアンスを確保し、フィンテック・ベンチャーの安定した基盤を育成してください」
4. 顧客中心主義
「フィンテック成功の核心は、顧客ニーズの理解と満足にあります。顧客を事業の中心に置くことで、実際の市場需要に対応する製品やサービスを調整し、ロイヤルティを構築し、持続的成長の強固な基盤を確立することができます」
ドバイ起業の現実的な魅力
フェラスの成功は、実際にドバイ起業にどんな可能性があるかを示しています。
具体的なサポート体制
- 2年間の家賃無料オフィス
- 政府系企業との事業開発支援
- 投資家ネットワークへのアクセス
- 金融規制のサンドボックス
- 世界クラスの金融機関とのネットワーキング
- ライセンス取得支援
- 多様な資金調達環境:
- 政府系ファンド
- 国際的なVC
- エンジェル投資家コミュニティ
解決されていない課題領域
ドバイには、まだまだ解決されてない問題がたくさんあります:
- ヘルスケア・テック:外国人人口90%の健康管理
- エドテック:多言語教育システム
- ロジスティック・テック:中東のハブ機能強化
- サステナビリティ・テック:砂漠気候での環境問題
日本の技術力とサービス精神で、新しいソリューションを作れるはず。
まとめ:次のフェラス・ジャルブートはあなたかもしれない
フェラス・ジャルブートの物語は、一人の真面目な銀行員が世界を変えた話です。
彼が特別だったのは、15年間同じ問題を見続けて、「これはおかしい」と声を上げたことです。
そして最も重要なのは、最悪のタイミングで行動を起こした勇気でした。
現在のフェラス(2024年)
推定36歳のフェラスは、今も成長を続けています。
Barakaはまだまだ発展途上。彼の最終目標は:
「中東の若者が、世界と同じように投資できる環境を作りたい」
そのために、彼は毎日こう自問しています:
「今日、何人の若者が初めて投資を始めるだろうか?」
「僕たちのおかげで、何人が将来の不安を解消できるだろうか?」
「問題を見つけることは簡単です。でも、その問題と15年間向き合い続けることは簡単ではありません。もしあなたが本当に解決したい問題があるなら、今すぐ行動してください。完璧なタイミングなんて来ません」
そして、ドバイについてこう語ります:
「ドバイは『やってみよう』と言ってくれる場所です。日本の技術力と丁寧さがあれば、必ず成功できます。重要なのは、誰かの人生を本当に良くしたいという気持ちです」
YHIKからのサポート
僕たちYHIKも、そんな日本人起業家を全力でサポートします。
「ドバイで何かを始めたい」
「フェラスみたいに世界を変えたい」
そう思ったら、いつでも相談してください。
フェラス・ジャルブートの次は、あなたの番かもしれません。
世界が待っています。
参考リンク:

YHIK ドバイスタートアップ支援
YHIK CORPORATE SERVICES PROVIDER FZCO
ドバイはじめUAE進出をサポートするドバイに拠点をおく会社です。
あなたのスタートアップを支援します。